逃げないでっ! 白馬の騎士現る? 小説「ドン・キホーテ」書評
逃げないでっ!
おばちゃんは逃げる
逃げるおばちゃん
前しか見ないおばちゃん
国道から近道しようと、対向車をやり過ごして丘を越える道に右折した。すぐ前には黒の軽乗用車が一台、とろとろと坂を上る。
車間を開け気味についていくと、前の車はなんか変。始めは変が分からず、違和感だけがモヤモヤする。あ、右の後輪が潰れてる。パンクだー。プッ、プッと軽くクラクションを鳴らすも、運転してるおばちゃんは前しか見ない人種のよう。仕方がないのでついていく。
曲がりくねる坂を上り、坂を越え、曲がりくねる坂を下りる。下りる下りる、下りで加速。よくあることだが、今は危険かも。
事故んなきゃいいけど・・・。
止まるおばちゃん
人工湖の横を曲がりくねって降りた先には、交差点。交差点の信号が青になり、黒の乗用車は直進してすぐの施設の駐車場に入る。由緒ある天然温泉には間違いない公衆浴場だ。俺の行く先はこの交差点から右折方向だが、ここは成り行きでおばちゃんについて直進し、黒の軽乗用車の横へ駐車した。
ガチャッ、俺は急ぎ気味で車を降りる。日差しが暑い。おばちゃんは運連席でなにやらモゴモゴしてて、なかなか降りてこない。コンコン、運転席の窓をノックすると驚いたような瞳と目が合った。
お節介
後ろの右が、パンクしてますよー。
えー、やだー、うそー
ほら、タイヤがぺっちゃんこ。
あれー、どうしましょ。
今から、スペアタイヤに交換したげるから、後ろ開けてー。
俺はおばちゃんのダイハツ ミラのトランクを開け、ゴソゴソと黄色いホイルのテンパータイヤを取り出す。ジャッキやレンチは俺の車から使い慣れたものを取り出し、ちゃちゃっとタイヤ交換を済ませる。
なるべく早くガソリンスタンドに行ってパンク修理してねー。
ありがとー。
おばちゃんは、手をふって風呂屋へ消えた。白馬の騎士の額から汗が滴る。俺も風呂に入りてー。
小説 ドン・キホーテ
ご存じのように、自分を騎士だと思い込んでしまって迷馬ロシナンテと共に世の中の不正を正す旅に出るおっさんのお話。「騎士道物語」という読み物にのめり込み現実と物語の区別がつかなくなってしまい、周囲をまるで騎士道世界と誤認し次々とトラブルを巻き起こす。少し切ない面白い物語です。表紙のお目目、怖っ。
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おわりに
か弱い女性の緊急タイヤ交換の方法は「パンクしたタイヤをしゃがんで見つめて途方に暮れる。」
か弱い女性のタイヤチェーンの装着方法は「タイヤチェーンを持ってたたずみ、途方に暮れる。」
か弱い女性の脱輪脱出の方法は「悲しそうな顔で、途方に暮れる。」
通行がありさえすれば、あなたの年齢に関係なく必ず
用語の解説
テンパ―タイヤ | スペアタイヤの一種。テンポラリータイヤとも呼ばれ「応急用のタイヤ」。細くて硬い。なるべく早く普通のタイヤに戻さなければならない。最近の車には常備されていないことも多い。 |
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